カラメルとは?
カラメルは、砂糖、ぶどう糖等の食用炭水化物を熱処理して得られたものであり、食品や飲料を褐色に着色するために広く用いられている食品添加物です。また、薬品や化粧品等にも用いられています。
英語では、CaramelもしくはCaramel Colorと表記されます。
カラメルは、褐色の液体または粉末で、特有の風味を有し、水に溶けやすく、油脂や有機溶媒には溶けません。カラメル水溶液は、淡褐色から黒褐色を示し、熱や光に対して安定です。
カラメルの歴史
欧米では、古くから、家庭で糖を加熱して得られた手作りのカラメルが料理に利用されていました。19世紀には、商業的に生産されたカラメルが菓子や飲料、ビール等に利用され始めました。日本には明治初期にドイツからカラメルが初めて輸入され、ほどなく、国産カラメルの製造販売が開始されました。大正から昭和初期においては、カラメルは主に醤油、ソース、佃煮等に利用されていました。昭和30年代以降の経済成長により食の洋風化、多様化が進み、多くの加工食品が生まれ、カラメルの用途が広がりました。食品産業の発展とともに、カラメルは種々の食品や飲料に利用されています。
日本カラメル工業会(昭和27年設立)は、日本食品添加物協会(昭和57年設立)と連携を取りながら、カラメルの普及をはかり、カラメルの研究開発、規格化および安全性評価等に取り組んでいます。また、日本カラメル工業会は、世界各国のカラメルメーカーおよびカラメル使用者から構成されているITCA(International Technical Caramel Association)に参加しています。
カラメルの使用目的と用途
カラメルを使用する目的は着色です。また、副次的効果として、食品や飲料にロースト感の付与、フレーバーとの相乗作用、にがみ付与、コク付け等カラメルの特性を利用することもあります。カラメルは着色料の中では用途が最も広く、使用総量が最も多いものです。カラメルの主な用途例としては、清涼飲料水、アルコール飲料、漬物、醤油、ソース、みそ、菓子、乳製品、加工食品、薬品、化粧品、ペットフード等があります。このようにカラメルは食品や飲料の性質に合わせて使用されています。
天然系色素および合成色素を含めた日本の食品用着色料市場において、カラメルは数量ベースで80%以上を占め、需要量は約1万9千トンといわれています。
位置付け
食品添加物のうち、天然物を原料として、天然物そのまま、あるいは分解したものから取り出したものがいわゆる天然添加物です。カラメルは天然添加物と見なされていました。
1995年(平成7年)、食品衛生法および栄養改善法の一部を改正する法律が公布され、既存添加物名簿が作成されました。この法律の公布の際(1995年5月24日)、現に販売され、または販売の用に供するために、製造され、輸入され、加工され、使用され、貯蔵され、もしくは陳列されている添加物が既存添加物とされました。天然添加物について食品添加物の指定制が適用され、天然添加物という呼称は法的に廃止されました。カラメルは既存添加物に該当します。
ちなみに、食品衛生法において、食品添加物は、指定添加物、既存添加物、天然香料、一般飲食物添加物の4種類に分類されます。
指定添加物とは、厚生労働大臣が指定した食品添加物のことであり、食品衛生法施行規則別表第2に掲げられた添加物をいいます。
天然香料とは、動植物から得られた物またはその混合物で、食品の着香の目的で使用される添加物をいいます。
一般飲食物添加物とは、一般に食品として飲食に供される物であって添加物として使用されるものをいいます。
規格・規準
カラメルは食品添加物であり、食品衛生法の規制を受けています。また、カラメルは世界各国で使用が認められており、各国の食品添加物に関する法律の下で規制を受けています。カラメルの輸出入にあたっては、輸入国のカラメル規格に適合しなければなりません。
主なカラメルの規格は以下のものに記載されています。
日本 | 第7版食品添加物公定書 医薬品添加物規格(薬添規) 医薬部外品原料規格2006(外原規2006) |
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国際規格 | JECFAの食品添加物規格 |
米国 | CFR Title21. 73.85 |
欧州 | EUの着色料指令(94/36/EC) |
JECFA:Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives FAO/WHO 合同食品添加物専門家委員会
FAO:Food and Agriculture Organization of the United Nations 国連食糧農業機関
WHO:World Health Organization 世界保健機関
CFR:Code of Federal Regulation 連邦規則
EU:European Union 欧州連合
種類と定義
カラメルの種類と定義は、平成8年厚生省告示第120号既存添加物名簿および既存添加物名簿収載品目リストに記載されている通りです。その告示までは、カラメルはひとつのものとして取り扱われていましたが、このとき、以下の4種類に分類されました。
品名 | 簡略名 又は類別名 |
用途 (注) |
備考 | |
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名称 | 別名 | |||
カラメル I | カラメル | カラメル色素 | 着色料 | Caramel I(plain) |
カラメル II | カラメル | カラメル色素 | 着色料 | Caramel II (causutic sulfite process) |
カラメル III | カラメル | カラメル色素 | 着色料 | Caramel III (ammonia process) |
カラメル IV | カラメル | カラメル色素 | 着色料 | Caramel IV (sulfite ammonia process) |
(注)用途には製造用剤もあります。
第8版食品添加物公定書2007年(平成19年)に収載されているカラメルの定義は以下の通りです。
カラメル I | 本品は、でん粉加水分解物、糖蜜又は糖類の食用炭水化物を、熱処理して得られたもの、又は酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、亜硫酸化合物およびアンモニウム化合物を使用していないものである。 |
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カラメル II | 本品は、でん粉加水分解物、糖蜜又は糖類の食用炭水化物に、亜硫酸化合物を加えて、又はこれに酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、アンモニウム化合物を使用していないものである。 |
カラメル III | 本品は、でん粉加水分解物、糖蜜又は糖類の食用炭水化物に、アンモニウム化合物を加えて、又はこれに酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、亜硫酸化合物を使用していないものである。 |
カラメル IV | 本品は、でん粉加水分解物、糖蜜又は糖類の食用炭水化物に、亜硫酸化合物およびアンモニウム化合物を加えて、又はこれに酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたものである。 |
表示
カラメルを食品に使用した場合の表示については、食品衛生法とJAS(日本農林規格)法の規制があります。食品添加物であるカラメルの表示は食品衛生法施行規則に従って行なわれます。
食品添加物の表示方法は、用途名併記、物質名、一括名等により行ないます。カラメルを着色料目的で使用した場合は用途名併記となり、一般的には次のように表示されています。
「着色料(カラメル)」または「カラメル色素」
使用規準
カラメルについては、使用量の制限は規定されていませんが、着色料(化学的合成品を除く)の使用基準(使用制限)が適用されます。この使用基準はカラメル製品に以下のように表示されています。
「本品は下記の食品に使用できません。
・こんぶ類、食肉、豆類、野菜類、わかめ類(これらの加工食品を除く)。
・鮮魚介類(鯨肉を含む)、茶、のり類。」
なお、茶とは「不醗酵茶(せん茶等)、醗酵茶(紅茶等)、及び半醗酵茶(ウーロン茶等)をいうものであること」(46.11.8環食化第287号)
のり類とは「干しのり、焼きのり、味付けのりを含むものとするが、のりのつくだには含まないこと」(46.11.8環食化第287号)となっています。
用語の定義の詳細については「食品の範囲ガイド」(日本食品添加物協会)等をご参照下さい。
安全性
カラメルについては、変異原性試験、反復投与毒性試験、発がん性試験等多くの試験が行なわれ、安全性に問題がないことが報告されており、すでに安全性が確認されています。
1982年(昭和57年)、厚生省はカラメル(カラメル III )のマウス、ラットを用いた2年間の慢性毒性試験を実施し、「がん原性は認められない」と報告しました。
厚生省生活衛生局食品化学課監修の「既存天然添加物の安全性評価に関する調査研究ー平成8年度厚生科学研究報告書」中においては、カラメルは「JECFAにおいて安全性評価がなされた天然添加物」であり、「米国において流通が認められていることが確認された天然添加物」および「EUにおいて流通が認められていることが確認された天然添加物」であると示されています。
JECFAは、1985年にカラメル I 、カラメル III およびカラメル IV について、2000年にカラメル II について安全性の確認を行いました。米国では、カラメルはFDA(Food and Drug Administration 食品医薬品庁)によってGRAS(Generally Recognized as Safe,一般に安全であると認められる)物質に規定されており、検定免除の着色料にリストアップされています。